上遠野浩平『しずるさんと底無し密室たち』正統派。 [本]
表紙が超美少女絵だったのでエロい話かと思ったら全然違いました。
上遠野浩平『しずるさんと底無し密室たち』
しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World
- 作者: 上遠野 浩平
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2004/12/09
- メディア: 文庫
病院から一歩も出れないしずるさんは、奇怪な事件が大好き。親友のよーちゃんが持ってくる情報だけを頼りに、その明晰な頭脳でいともたやすく謎を明らかに。短編4編収録。
表紙も挿絵も超美少女。密室なんて冠していますがミステリ要素は期待せず、エロを思って手に取りました。生まれてすみません。どっこい中身はかなり正統派の本格ミステリ。取り扱われるのは残酷怪奇な事件ばかりですが、その実態は至極派手さの無い話でした。
しずるさんと吸血植物:ムシトリナデシコの白い花に包まれ発見されたミイラ。しかしその男は6時間前に元気な姿を目撃されていた……
タネを明かせばそりゃそうな話。いわゆるミステリの掟を逆手にとったなかなか鮮やかな作品です。ただ種明かし後、少し説明がくど過ぎて余韻が無かった。
しずるさんと七倍の呪い:大人気のカードゲームにまつわる残虐な事件。その開発者の家族は、6人が首を切られ、1人は両腕を切断されていた……
ちょっと分かりづらい話。カードゲームのルールがネックになってるのかもしれませんが、そこまで考慮しないで読んじゃった。他の話に比べると無理が多いです。
しずるさんと影法師:祭りの最中に急死した男。しかし彼は同時期様々な場所で目撃されていた……
これもタネを聞けば当たり前の話。ただキーになるトリックがイメージしづらい。
しずるさんと凍結鳥人:雑踏の街、大勢の人間が見ている中、時計台に舞い降りた死体。しかもそれは、完全に凍り付いていた……
都会に舞い降りる凍死体のイメージがいいです。これも突拍子も無い事件ながら、解答はそれなりに納得のいくもの。面白いです。
以上4編。どれも怪奇な事件に真っ当な解答。少々説明がくどいのが残念ですが、あっという間に読んでしまいます。しずるさんもよーちゃんも美少女ですが、恥ずかしくなるようなやりとりはあまり無く、その点もグッド。ただ表題の”密室”はしずるさんが思う観念的なもので、ミステリで一般的に用いられる密室ではありません。4つの事件のうち3つは屋外で死体見つかってるし。
意外なほどにおもしろかった。シリーズ作品もチェックしてみます。
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