吉屋信子『花物語 中巻』うっとりに死す [本]
吉屋信子『花物語 中巻』
花にまつわる少女達の物語。短編12編収録。
少女小説の元祖。中原淳一描く少女画を観る機会も増えましたね。もっと注目再評価して欲しい作品です。上巻ではほとんど話らしい話が無く、ただただ美しい言葉の中で少女達がうっとりしているだけだったのですが、この中巻はかなり物語的になっていました。
とにかくね、死にます。人がもうボロボロと。あるものは募った思いのため、あるものは病の為、あるものははかない運命ゆえ死から逃れるのを拒絶して。吉屋先生描く”美しい人”のまわりには常に”はかなさ”の要素があり、特に時代柄その一因が”結婚”。吉屋ワールドでは”処女性”がスーパー重要で、”結婚”はその対極。その結婚が幸せなものであろうが無かろうが、一つの神性が損なわれる要素である。という信念で描かれてます。あ、だからこの物語に出てくる恋慕、基本おねえさま的あるいは同級生に対するあこがれです。っていうか男ほとんど出てきません。
私は本来そういうものにツバを吐くような人間なのですが、とにかく本当に美しい言葉で描かれているし、うっとりズム溢れる展開も、作者が距離を置くようなことなく、呑まれながら描いているため全くイヤミにもマヌケにもなりません。本気で感動します。
ところで吉屋先生の筆は男女の恋愛を描くこともあるのでしょうか。あれば読んでみたいです。
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