SSブログ

大阪圭吉『とむらい機関車』もっと多くの作品があれば [本]

西尾維新のファンなら気になっているはずの”死の快走船”の作者です。

大阪圭吉『とむらい機関車』

とむらい機関車

とむらい機関車

  • 作者: 大阪 圭吉
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2001/10
  • メディア: 文庫

短編9編と随筆を収録。

とむらい機関車:毎週決まった時間に機関車にひき殺される豚。その奇妙な事件の裏には、悲しい女の恋があった…

独特の暗さと色気と雰囲気を持つ作品。私はこれを読んで一発でこの作者が好きになりました。

デパートの絞刑吏:デパートで発見された墜落死体。残された傷から、名探偵青山喬介は鮮やかに事件を解決する。

ちょっと子供向けの推理クイズみたいなトリック、いわゆるコレが”本格”なんでしょうなぁ。一般人のクセにすごく信頼されている青山喬介が面白いです。

カンカン虫殺人事件:港に上がった殺害死体。わずかな手がかりも青山喬介が事件を解決するには十分だった。

特にひねりのない単純な話。大阪作品の特徴は犯人側の心理…動機なんかをあまり語らないところにあるようですが、あっさりし過ぎ。ちなみにカンカン虫は溶接作業者のことみたい。

白鮫号の殺人事件:船上で浮き輪に吊るされて発見された死体。青山喬介の的確な推理が犯人を追い詰める。

これを改稿したものが”死の快走船”だそうです。確かに青山喬介の登場が不自然なのですが、この人いつも不自然だからなぁ。

気狂い機関車:雪降り積もる駅で発見された死体の周りには足跡が無かった。さらに見つかる新たな死体。果たして犯人はどこから現れどこに消えたのか?

これまた動機がスッと語られて終わっちゃう話。もっと犯人描いてやってくれよ。

石塀幽霊:目撃者がある殺人事件。しかしあとから出てきた証拠が、その犯人を否定する。一体どんなトリックが隠されているのか?

この雰囲気の中で読まされなければコレ相当酷いトリックですぞ。おもしろいけど。

あやつり裁判:たびたび証言台に立ち、裁判をひっくり返す女。その秘密とは?

謎は面白いのですがオチは結構ガッカリ…っていうか普通です。

雪解:金採掘に魅せられた男がそれに成功した男を殺害してしまう。しかし奪った鉱床からは…

金の魅力に取り付かれた男の哀れな末路。他にいくらでも成功する選択肢があるのに、そうではない道しか選ばない男が滑稽です。

抗鬼:炭鉱で起こった火災で閉じ込められてしまった男。ところが見殺しにした男達が次々と殺害され…

中編です。予想外の展開を見せる事件は面白かったですが、やっぱり犯人側の書き込みが物足りないなぁ。そんな事で殺すか?

以上9編。古い作品ゆえ所々読めない漢字があったりしますが、そこが作品の雰囲気にもなっています。”六ヶ敷い”と書いて”むつかしい”と読ませたり。

作者は戦争に赴き、ルソン島で病死したそうです。その為発表された作品はそう多くはないようで、残念なことです。

記事が気にいった方はココをクリックしてださい。ランキングされます。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。