東野圭吾『名探偵の呪縛』

つくづく、読書の秋です。

東野圭吾『名探偵の呪縛』

名探偵の呪縛

• 作者: 東野 圭吾
• 出版社/メーカー: 講談社
• 発売日: 1996/10
• メディア: 文庫

作家の”私”は訪れた図書館から奇妙な世界に迷い込んでしまう。そこで私はいつのまにか”名探偵・天下一”となり、この古めかしい町に起こる事件の謎を解くこととなる。この町に決定的に欠いた、ある物を巡る謎に……

メタフィクションというんでしょうか。作者・東野圭吾自身を思わせるキャラクターが登場し、その方向性を示すような作品です。といっても内容は普通の推理小説。各章ごとに描かれる事件を名探偵が鮮やかに解いていくものなのですが。

種明かしをしてしまえば、この世界に決定的に欠いているものは”本格推理”、謎解きそのものの面白さを追及した発想です。この世界の登場人物たちは”密室”という言葉さえ知りません。そこで起こる事件を通し、次第に作者自身がこのジャンルとの接し方を見つめなおすと言ったところ。

って書くとちょい難しいですが、私見ではコッテコテの”本格推理”（密室、人間消失、不可能犯罪や奇妙な館なんかが出てくる奴）、なんかもう、ようけ書けん。でも、やっぱ好きなんだよ。ってくらいのテイスト。東野圭吾そんなに読んでるわけじゃないんで間違ってるかも。

ちなみに本格に対する推理小説としてあげられてるのは松本清張なんかです。事件を通して人間、あるいはそれが起こった社会背景を描くのがメインなもの。

ここに登場する名探偵・天下一は『名探偵の掟』という作品にも登場します。そちらは本格推理のお約束をパロディにしたものらしいのですが…未見。こっちから読んでたら多少印象が違うのかも。

名探偵の掟

• 作者: 東野 圭吾
• 出版社/メーカー: 講談社
• 発売日: 1999/07
• メディア: 文庫

まぁぶっちゃけ難しいことを抜きにすれば小物ですがそれなりに面白い、読みやすい小説でした。

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