『駿河城御前試合』最終章 [シグルイ]
長いこと続けてきました、変態残酷時代劇漫画『シグルイ』の原作、『駿河城御前試合』の解説ですが、いよいよ今回が最後です。真剣による11試合の解説は、既に終了していますが、今回は全ての試合が終わった後。血まみれの後日談を解説したいと思います。もちろんネタバレ。シグルイの元になる、第1試合の結果も書いてあるので、お気をつけて。できればこれまでの試合の記事を読んでからお目通し願うでござる。
最終章 剣士凡て斃る
死人が溢れ返った御前試合が終了しました。結果無傷だったのは、第1試合、流れ星の藤木源之助。第2試合、薙刀の磯田きぬ。第3試合、不殺剣の月岡雪之介。第8試合、疾風剣の小村源之助の4名のみ。負傷しながらも勝利したのは第3試合で右膝を割られた笹原修三郎と第7試合、左肩に深手を負った片岡京之介の2名。結局生き残ったのは6名だけとなりました。
ところがです。試合後突然現れた謎の剣士、車大膳に、月岡雪之介は惨殺、小村源之助は深手を負わされてしまいます。この間文庫にして、わずか3行。しかも戦闘は全く描かれていません。エイリアン2であんだけ苦労して助けた女の子が、3の冒頭で死んでたくらいのショックです。作者・南条範夫先生の筆はもはや凶器也。
ちなみに車大膳は本当に謎。この後は出てきませんので、気になる方はご自分でお調べください。南条先生作の別の話に出てくる剣士のようです。
さて、この試合の勝者は藩に召抱えられることが決まっていました。早速お大臣が藤木を誘いにいきますが、藤木、これを固辞します。
彼がこの試合に出たのは、何より対戦相手の伊良子斬れば、恋しい恋しい三重ちゃんが、ヤらせてくれると言ったからです。そのため藤木は実に三年!同じ屋根の下にいながら三重ちゃんに手を付けられない生活を送りました。その間幾度褌を汚したことでしょうか。
ところが、やっとこさ伊良子をぶった切ったら、三重ちゃん自殺してやんの。それだけ伊良子に愛憎を抱いていたんでしょうが。いくらなんでもそりゃあんまりだよ。せめてオッパイくらい揉ませてあげればいいのに。
かような訳で、藤木、仕官どころか、生きていくのさえアホらしくなっていました。
そんな感じでほうけた生活を送っていた藤木でしたが、そこは剣士。同じく試合で勝利した、片岡や小村と話をするときは、それなりに盛り上がります。
3人の話題は、やはりあの第2試合。変態座波間左衛門さん(以下変態間ちゃん)のことです。確かにきぬちゃんは良く頑張っていました。でも、誰の目から見ても、あの試合は変。実は極上Mの変態間ちゃんが、自分から進んで斬られていたのですが、真面目な3人にはそんなこと思いもよりません。ただ、女で深手を負った直後の藤木だけは、変態間ちゃんは、きぬに特別な感情を抱いていたんじゃないかな、とおぼろけながら察しました。
そんな風に複雑な事情を想像していたら、火照った身体がそうさせたのでしょうか。藤木ったらいつのまにか、きぬにフォーリンラブしてしまいます。げぇー!失恋直後が一番危険って本当だァーッ!!
一方変わってこちらは小村。やはりあの第2試合のことが気になる小村は、直接きぬに聞いてみるのでした。・・・嫌な予感しません?・・・正解。小村ったら、実際にきぬと手合わせしたら、きぬにほれちゃいました。さらに悪いことに、きぬのほうも、自分と真剣に向き合ってくれる(戦ってくれる)小村に、胸がドキドキです。手合わせが終わった時には、肩に手なんか回しちゃって、もうキスしちゃえばいいじゃん!って感じになってました。
ところがです。ここに突然来客が。よりによって藤木!どこまでもついてない男藤木が、最悪のタイミングで登場です。ただでさえ、キスのチャンスを邪魔されて、むかついてる時に、藤木ったらきぬと手合わせがしたいとかいいだしました。
小村と同じように、きぬの実力が見たかったのですが、どんなときでも全力で向うのが礼儀と思っていた藤木は、一瞬できぬに勝利してしまいます。
ラブフラグを潰されて、おまけにあっさり負けてしまったきぬ。藤木がむかつきます。そのむかつきの反動で、ますます小村に惹かれていきました。男の子と違う、女の子って。好きと嫌いだけ普通がないの。
さて、再び藤木のところにお大臣がやってきました。耳ざといお大臣、藤木がきぬにホの字と聞きつけて、コイツを利用する腹積もりです。きぬと結婚してここに残ったらと誘ったら、藤木、真っ赤になってしまいました。おそらく童貞です。「じゃー、きぬのほうにはわしから言っとくから」。お大臣、さっそくきぬのところにやって来ました。
お大臣「きぬちゃーん。死んだ旦那のことはわかるけどさぁ。もういいんじゃなーいい?源之助と結婚しちゃいなよー」
きぬ「ぇえ?げ、源之助さま?ポッ」
きぬのまんざらでもない様子に、お大臣、ご満悦で帰りました。ところが次の日、小村が血相変えてきぬの元にやってくるではありませんか。喜んでくれるとばかり思っていたのに、小村、めっちゃ怒ってます。あれ?
小村「ちょ、おい、ちょ・・・待てよ!おま、藤木と結婚するってマジかよ!」
きぬ仰天です。
何てこった。俺たちはとんでもない考え違いをしていたんだよ!藤木、小村。この二人の共通点・・・それは、二人とも源之助という名前ってことだ!つまり、お大臣が言ったのは藤木のつもりだったけど、きぬは小村だと思って、結婚を受けてしまったんだよ!!
って、えー!!!つーか何が悲惨って、源之助がきぬが結婚を受けてくれたと思って、喜んでいることですよ。頼むからみんな。もうこれ以上、あの童貞を苦しめないでくれ!!!
きぬは慌ててお大臣に元に行きますが、もとより藤木を召抱える為の作戦。お大臣はそんなもの全く聞き入れてくれません。きぬ、超しょんぼりです。
さらに悪いことに、そんなしょんぼりきぬを、通りがかりの駿河城城主、忠長が気に入ってしまいました。殿に気に入られる、ってことは、要するに大奥に入れろ、ってことなのですが、この忠長、アブないヤツで有名です。だから大奥に入れられる、っちゅーことは、もはや死ぬかもしれないってこと。好き好んで入る奴はいません。ところがこの時代、城主の命令は絶対です。
泣きっ面に蜂とはこのことです。茫然自失で帰ってきたら、ちょうど小村と藤木がケンカしていました。きぬを取り合ってのケンカですが、今はそれどころではありません。大奥入りの話を告げると、二人もビックリ。ここは一時休戦、とにかく逃げようという話になりました。
お大臣に命じられ、逃げ出した三人を追ってきたのは、片岡と笹原でした。さすがに藤木と小村は剣の達人。雑魚がいくらかかっても倒せそうにありません。自ずと、小村VS片岡、藤木VS笹原になりました。
片岡は、しかし既に試合の怪我のせいで、得意の垂れ糸の構えは完璧ではありません。そこを突いた小村に切り下げられてしまいます。小村が勝利した瞬間でした。周りに囲んでいた雑魚の刃が、いっせいに小村に突き刺さりました。
一方藤木に対峙した笹原も、右膝の傷を攻められ、馬から落とされてしまいます。そこから得意の押し切りにかかった藤木。しかし、両断する直前、笹原の脇差が、藤木の脇腹に突き刺さるのでした。
きぬはといえば、哀れ薙刀を持たない身。追っ手に囚われてしまうのでした。
そしてその夜です。忠長はやっときぬとヤれるとうきうきしていました。ところが、きぬがいつまでたっても顔をあげません。その時きぬは、すでに懐剣で胸を突き、絶命していました。
ここにおいて、駿河城御前試合に参加した凡ての剣士が、斃れたのでごさいます。
おしまい。
読む手間が省けましたw
これくらいの要約の方がネタバレとしても有難いです
by NO NAME (2010-09-23 12:29)
>NO NAMEさん
そういっていただけると嬉しいです。
by けんたろう (2010-09-23 19:59)
駿河城御前試合の全試合を感心しながら拝読させていただきました。
おもしろいけど藤木が不憫でなりません。
コミックはこの前で終わっててそこでもむごいの一言でしたが、ここまでくるともう藤木が呪われているとしか思えません。
しかしコミック化してくれるといいなぁ、と無責任に考えています。
by NO NAME (2010-11-25 01:08)
>NO NAMEさん
ありがとうございます。藤木はホントデラ不憫です。持ち上げて落とすとか…カンベンしてあげて欲しいです。
by けんたろう (2010-11-25 23:28)