『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』上質の”お遊び” [本]
週間少年ジャンプで連載中のマンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の連載30周年を記念した、こち亀キャラと7人の作家のコラボ作品。
『小説こちら葛飾区亀有公園前派出所』
幼な馴染み:大沢在昌
新宿鮫とのコラボ。両さんが藪と同級生という設定です。型破りだけど筋が通っているという、まぁこういう風に描くだろうなという基本の話。鮫島と晶が普通に仲がいいので”氷舞”以前でしょう。ちなみに鮫島、何もしない”ダメ島”版です。
池袋⇔亀有エクスプレス:石田衣良
マコトの元に人探しを依頼しに来た時代錯誤の不恰好な男。しかし男の奇妙な魅力にマコトは興味を覚えて…
いやー”趣味は読書です”とか言ってるんですが、実は石田衣良未読。だからIWGPキャラわかんないんだよね。でもおそらく作者らしい、小気味の良い作品だと思います。
キング・タイガー:今野敏
定年を迎えた元刑事が模型店で見かけた美しく組まれたプラモの戦車。男はそこにのめりこめるものを感じる…
人情話や現代風俗、ギャグなどさまざまなテイストがあるこち亀の中で、私が一番好きなのはホビーうんちく話。最近は版権等の関係か、めっきり少なくなりましたが、この話は自身もプラモ好きという著者による熱いプラモ話でとても気持ちがいいです。最後にちょっとだけ出てくる両さんが凄くいい使い方。
一杯の賭け蕎麦-花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す-:柴田よしき
保育園の園長を務める花咲慎一郎がいきなり連れてこられたのは園児の祖父の食い逃げ現場。そこで待っていたのは…
めちゃくちゃながら自身の筋を通す両さんがカッコよく、お話も綺麗で面白い。著者のキャラとこち亀キャラが完全に機能している快作。漫画のこち亀にあってもおかしくないレベルです。
ぬらりひょんの褌:京極夏彦
”ぬらりひょん”…大原部長の人生を決定付けたその妖怪の意外な正体は…
こち亀ワールドを見事に自分の世界に持込んだ、京極堂の遊び心満載の作品。京極作品を読んでいればさらに倍々楽しめます。あの人だけでなく、あのキメ台詞まで出てくるし。
決闘、二対三!の巻:逢坂剛
御茶ノ水署の梢田たちは葛飾から研修にやってきた変な男とやたらいい女が気に入らず、とうとう賭けをすることに…
うーん、逢坂先生のこと、全然知らないのですが、はっきりって他作品から愕然と落ちるレベル。自身のキャラも魅力が無いし、こち亀キャラもなんかズレて捉えられている。麗子のビッチぶりが酷いです。オマケに話もつまらない。これ、ミスキャストですよ。
目指せ!乱歩賞:東野圭吾
江戸川乱歩賞が金になることを知った両さんは驚異的な力で作品を仕上げる。しかし彼の真骨頂はまだまだこれからだった…
原作のスラップスティック要素を倍加した東野コメディ。著者、楽しんで書いてます。新人賞の”下読み”を知っている人はさらに楽しめます。
以上、7編。豪華執筆陣のほとんどが”お遊び”をよく理解していて楽しめました。なかなか面白い企画だと思います。
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