江戸川乱歩『月と手袋』 [本]
この前幻影城（※１）を見てきましたが、イメージより大分小さかったです。
江戸川乱歩『月と手袋』
月と手袋：激情にかられ、不倫相手の夫を殺した男。常日頃から妄想していた完全犯罪を実施するが……
いやもう何てこと無い話。ウィリアム・アイリッシュの『シルエット』と似てます。相変わらずタイトルは抜群に格好いいですが、月夜の晩に軍手嵌めただけで、月も手袋もキーでもなんでもないです。
地獄風景：大金持ちの猟奇愛好家が作った奇怪な大遊技場・ジロ楽園。そこで次々と起こる残虐な殺人事件。果たして犯人の目的は……
『パノラマ島奇談』とよく似た設定ながら、あっちは楽園の設立を目指し、こっちは崩壊を求めた作品。殺人のトリックは子供でもだませないようなどうしようもないものですが、倒錯性、猟奇性、血なまぐささまで漂いそうな文章は病的に魅力。殺人を目的とした殺人の禁忌な美しさで私はこちらのほうが好きです。これ誰か全力で映像化してくれよ。
モノグラム：かつて思いを寄せた女が実は自分を愛していた？その証拠をつかんだ男がちょっと痛いしっぺ返しを食らう話。
作者が再三断りを入れているように全くのオチ話。清水義範風か？こんなのも書くんだ。
日記帳：死んだ男のあまりに内気な告白方法。そしてそれに答えた女の伝わりづらい表現方法。暗号モノです。
狙いがさっぱり分からん作品。このトンチキな告白を”恥ずかしがり屋さん”で済ますなよ。ファイナルストライク（※２）の手法も用いられてますが、よく考えると衝撃の意味も不明。やっぱり、分からん。
以上４編。なんといっても『地獄風景』がオススメです。ふと、実在の大金持ちでこういう試みをする奴っていないのか？と妄想したり。
※１ 幻影城：旧江戸川乱歩邸の土蔵のこと。乱歩がここに篭って作品を書いたなどの伝説がある。
※２ ファイナルストライク：最後の一行にアッと驚くどんでん返しを持ってくる小説の手法…って宮部みゆきの本に書いたあったけど、ググるともうゲームの武器の話しか出てこない。
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