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『アイリッシュ短編集4/シルエット』不可も無く [本]

アイリッシュ短編集 (4)

アイリッシュ短編集 (4)

  • 作者: ウィリアム・アイリッシュ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1974/03
  • メディア: 文庫

「どんな気持ちかわかったか」 恋人を殺された男が選んだ復讐の手段は、犯人たちに直接手を下すのではなく、そのもっとも愛する人の命を奪うことだった。悲しい復讐譚『喪服のランデブー』、その作者コーネル・ウールリッチの別名がこのウィリアム・アイリッシュ。サスペンス短編集です。

毒食らわば皿:とことん気の小さい男が次々に殺人を犯してしまう転落劇。あまりの転落っぷりは喜劇的ですらあります。死の直前、手痛い皮肉を食らわせられる、なんだか寝覚めの悪い話。

窓の明り:戦場帰りの男は女の裏切りを知ってしまう。オチよりも戦場で疲弊した男の精神に興味が惹かれます。

青ひげ七人目の妻:妹の結婚相手が自分の追っている殺人犯と知った刑事の奮闘。どんでん返りそうで返らない。普通ですね。

死の治療椅子:歯科医の友人が治療していた患者が突然死亡。殺人の疑いをかけられた彼を救うため、男は自分を囮に、怪しい歯科医に潜入します。予想通りに話が進む、普通の話です。

殺しのにおいがする:ルームメイトの恋人が行方不明。あからさまに怪しい態度に男は自らも友人を疑いますが……なかなかに緊張感のある話ですが、オチの持ってき方は子供だましですし、犯人であるために犯人が登場しているのもちょっと。ただテンパってる友人のウザさが面白い。

秘密:夫からかつての殺人を告白され、それでも愛を貫いた妻。しかし夫の仇敵が死に、別の男が捕まったことで妻の中に同情心が芽生え……最高にウザい妻。正しいことをやっているようで、誰一人幸せにならないというかなりキツイ皮肉です。

パリの一夜:二人のヤンキー兵士がなれないパリで大暴れ。それがなぜだか全て上手いほうに転がって、二人は英雄に。これ、この時代の文化がわかっていないと良さがわからないんでしょうかね。ジャンプの漫画みたいな話ですよ。

シルエット:窓越しの影で殺人を目撃した夫婦が証言台に立ったが……冗談みたいな種明かしと二段オチ。綺麗なんだけどなんだかマヌケです。モップと女を見間違えたでみんな納得するなよ。

生ける者の墓:生きながら埋められる恐怖におびえ続ける男は、奇妙な秘密結社と関わって行きます。死を克服するという彼らには、恐ろしい刑罰がありました……途中まで何をしても秘密結社に筒抜けで、緊張感があったのですが、話が片付いたらやっつけみたいにボロだしてつかまっちゃう。なんだよそれ。さっきまでの超自然的な力はなんだったんだい。

全9編。はっきりいって古典です。古臭さはそれほど感じませんが、全体的にモタっとして、予想通りに話が進みます。どんでん返せる要素があるのにそうしないことも多いし。『喪服のランデブー』も野沢尚のドラマのほうが面白かったですからね。

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