『中島らも・こどもの一生』想像力で薄れる恐怖 [本]
中島らもっちゃー『寝ずの番』の映画公開が待たれますね。って、原作まだ読んでないけど。ところで、私の中で未だに真実がつかめないのですが、氏の著作中に出てきた『エイのアソコは人間の女性にソックリで、エイが揚がると漁師大喜び』ってホントなの?これって、タブーなのか?っつーことで『こどもの一生』。
・・・なんてジャンル分けしたらよいのでしょうか。元々は戯曲だったものを小説化したものなのですが。2/3までは、コメディ。現代的な話題を盛り込んだ、登場人物たちの会話を楽しむ、だらだらコメディです。毒をもった『やっぱり猫が好き』っていえば、少しは伝わるかな?あとの1/3は、スプラッタ・ホラーなのかな?
孤島にあるサイコセラピー施設に、5人の患者がやってきます。ここでは、彼らの疲れた心を、子供に戻ることで癒すのが目的。子供に戻った5人は、5人の中で新しい社会を築いていきます。そんな中、いじめっ子を懲らしめる為考えたのが『山田のおじさん』ごっこ。架空の人物『山田のおじさん』を作り上げて、いじめっ子が話に入れなくする遊びでした。ところが突然、こども達の前に山田のおじさんが実際に現れます。それも恐ろしい一面を秘めて・・・
前半コメディパートはだらだらと面白く、肩肘張らずに読めるいつものらも節です。ところが後半急展開。血まみれの殺戮シーンが繰り返されるのですが・・・正直あんまり怖くなかったです。
誰だか忘れましたが、サスペンスってのは、いかに爆弾を爆発させないかだ、って言っている人がいました。つまり、「いつ爆発する?いま爆発する?」ってドキドキさせるのが、肝だと。
その点このお話は、怪物は常に姿が明らかで、しかも散々に不死身ぶりをアピールしており、被害者たちに勝てる光明が無いのでハラハラしません。もうどうせ殺されちゃうんだろ、って思っちゃうから。
殺戮シーンの描写は仔細でグロいのですが、言葉が生む想像力ですから。深い部分で怖いの否定している私の想像力フィルターを通すと、あんまり怖くならないんですよね。って、それは私が悪いのか。
どっちにしろ、ホラー小説ってすごく難しいと思うんですよね。ガキの頃はポーの黒猫(※1)とかすっげー怖かった記憶があるんだけど、年取ってから読んだらなんてこと無かったからなあ。私の想像力が、恐怖を否定してるんだろうなぁ。
ぜったい舞台で見たら面白いんだろうに。そこが、ちょっと残念でした。
※1 ポーの黒猫:エドガー・アラン・ポーの傑作怪奇小説。夜通し鳴く黒猫に、秘密が暴かれる男の話。
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