『人体模型の夜』繊細なホラー [本]
とにかく今は記事がかけません。
中島らも『人体模型の夜』
中島らも。作家。劇作家。よっぱらい。『むちゃくちゃなおっさん』的表現が一番良く聞くと思います。至極意訳すれば、関西人の変なおっさんで、おもろおかしく、時に怖くて寂しい文章を書く人です。この『人体模型の夜』はホラーの短編集。
耳飢え:盗聴趣味の男が聞いた、不可解な会話。隣の女が話し掛ける相手は常に返事が無い。一体何故?
膝:人面瘡評論家が出会う、かかった者は行方不明になる本物の人面瘡の話。
ピラミッドのヘソ:妙に理屈っぽい神秘主義的な話
EIGHT ARMS TO HOLD YOU:ジョン・レノンの未発表曲の呪いにまつる話。
題材的に幅広く、中島らもってこんなにいろいろ書く人なんだなあ、と思えます。
私が特に気に入ったのは『貴子の胃袋』。『白いメリーさん』(※1)と同じように、ちょっとしたことが思春期の少女の心のバランスを崩していってしまう物語で、中島らもが繊細な文章を書く人であることがよく分かると思います。
以前、何かの番組で彼を見ましたが、アル中で、まさに『廃人』でした。なんつーか、気持ちが上がってるのか下がってるのか全然分からない感じで、番組の意図とは別に、アル中の恐ろしさを思い知った気がしました。当時は中島らもの本を読んでいなかったので、後日彼の本を読んで、あのアル中が、こんなに繊細な話を書くのか、と驚いたものです。ってなんかすげぇ言い草。私何様?
2004年、階段から落ちて亡くなりましたが、その時誰かが言った『らもさんは三途の川を見て『これ、なんの川やろ』って言ってるんじゃないか』ってコメントが、一番しっくりくると思いました。
※1 白いメリーさん:中島らもの短編ホラーの傑作。白いメリーさんという都市伝説を追ううちに、自分の娘を追い詰めてしまう男の話。ちなみにそのうわさの元になった人物は実在する。正確にはした。最近その人物を題材にした『ヨコハマメリー』って映画が公開されてました。
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