理想の男

『懐かしいって、そんなにいいものなのかなぁ？』（※１）

ある少年が言った言葉だ。俺は、レイといったら一堂零（※２）世代だが、すでにこの、懐かしいに結構囚われている。

しかし、１０年前、あの頃が、そんなによかっただろうか？まだ携帯がほとんど普及していなかったあの頃。『ねるとん紅鯨団』（※３）にいつか出たいと思ってたら、番組終わっちゃったあの頃。今は『吹き出物』に出世した『にきび』のため、クレアラシルクレアラシルだったあの頃。

あの頃の俺（以下あの頃のオレ略して『あレ』）は１０年後の自分が、今の俺（以下いまのオレ略して『いレ』）のようになっていると思っていただろうか。

・・・って即答すると、思ってない。つーか、１０年後のことなんて、考えていなかったＹＯ！ホント。高校３年生なのに、毎日晩ゴハンのおかずはなんだろーなー、とか考えていたからね。だって、今も１０年後のこと考えていないもの。今を生きる。今を生きるＹＯ！

一通りやんちゃさアピールしたところで、『いレ』は１０年後の自分を考えてみようと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだ独身・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これしか出てこなかった。ぶっちゃけはっちゃけ、それなりの学業を修め、社会の土を踏んだ現在も、１０年後のことなどまるで浮かばない。それが考えたくないからなのか、想像力が貧弱だからなのかは分からないが。前者なら『いレ』はピーターパンか。踵がカピカピのピーターパンか。早いとこマイケル（※４）に迎えに来て欲しいものだ。かといって後者であるのも悲しいな。・・・ダメなのか、『いレ』。

ご免、湿っぽい話になっちゃったね。でも私は大丈夫。落ち込んだりもするけれど、私は元気です。そうだ、１０年後どうなってるか分からないけれど、どうなっていたいかはあるな。それは『変わらない』だ。

思い出したが、『あレ』も、１０年後の自分は変わらないでいたい、って思っていた気がする。そしてその通り、あまり変わっていないと思う。今でも笑いのデフォルトはち○こ・う○こ・ま○こだ。体脂肪は増えたが、四捨五入制度を導入すればセーフだ。高校のころのお友達とはよくつるんでいるし、いまだにスーツが似合わない。

しかし何故、『あレ』と『いレ』はあまり変わっていないのだろう。この１０年、それなりの出来事があったはずだ。受験に失敗した。大学に入学した。中国人に振られた。パーマが明らかに失敗だった。就職した。・・・あれ、贔屓目に見ても、大したイベントがないじゃないか。

でも、それでいい気がする。大したイベントはなかったかもしれないが、結構楽しくやらせてもらっている。あとは今後、大イベントが起こっても、変わらないように注意するだけである。

月並みだが、人生いつ、何が起こるか分からない。事件事故しかり。１００歳になって初めて大ブレイクした双子姉妹（※５）もいたことだ。一瞬たりとも気が抜けない。

最後に、この変わらない姿勢を貫いた、未来の自分の理想像をシミュレーションしてみようと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高田純次か？アレ？俺の理想、高田純次？・・・アリだな。

この結果、『いレ』は満足だ。『あレ』がどう思うのか、知りたいところだ。奴はここまで計算して変わらないでいたいとは思ってはおるまい。

と、いうわけで、今日から高田純次を目指して頑張ろうと思う。たわいもない、高田純次の話であった。

※１　懐かしいって、そんなにいいものなのかなぁ？：ある少年とは、クレヨンしんちゃんの風間くんのことである。そう、私はオタクだ。つまりそういうことだ。

※２　レイといったら一堂零：私が考案し、誰一人受け入れてくれない世代分別法。その時はやったアニメの登場人物により、世代分けをする。と、いっても私が提案しているため、非常に狭い範囲にしか使えない。ちなみに一堂零は『ハイスクール！奇面組』の主人公。他に私より上の世代が『レイといったらアムロ・レイ（ガンダム）』、下が『レイといったら綾波レイ（新世紀エヴァンゲリオン）』。そう、私はオタクだ。つまりそういうことだ。

※３　ねるとん紅鯨団：１９８７～１９９４年放送されたフィーリングカップルバラエティ。司会はとんねるず。私の恋愛感の全てはこの番組で築かれたため､のちに無駄な苦労をする。

※４　マイケル：マイケル・ジャクソン・スーパースターのこと。スーパースターにしてピーターパーン。それでいて顔は成長する男。数年前『マイケル・ジャクソンの真実』というドキュメンタリーが放送された。翌日、私は友人に『どうしてわかってくれないんだ！ストゥッピド！ストゥッピド！』と、番組内のマイケルのモノマネを披露したところ、自信があったのに酷くウザがられた。どうやら皆、番組を見ていなかったようだ。

※５　１００歳になって初めて大ブレイクした双子姉妹：成田きん・蟹江ぎん姉妹のこと。常にあごがムーヴしていたほうがきんさんである。ユニットではなく、実の姉妹。